富野由悠季の世界

富野由悠季の世界

週刊トミノ展

WWT002

朗らかに歩め 〜青森展延期物語

4月18日から6月21日までと、本来なら今まさに会期中のはずだった富野展青森会場。けれど、オープン3週間前の3月26日、COVID-19感染症拡大を考慮し、青森県立美術館は富野展の延期を発表しました。すでにポスターやちらしは配布済みで前売券も販売中。各種イベント(ちらしに掲載している以外にもいろいろ仕込んでいて、例えば劇場作品の地元TV局での放映なども計画していた)の段取りや、青森独自の追加作品を含めた展示のプランニングなど、開催の準備もほぼ整い、あとは展示作業を行うという段階までたどり着いていたのですが……。
手帳で振り返ってみると、3月21日の金曜日は新規に借用する作品の輸送スケジュールを組んだり、集荷のための出張準備などいつもどおり仕事していたのに、週が明けると急展開。23日の月曜日にオープニングイベントが中止となり、そして25日には館内で朝から終日打合せを行い、議論の末に会期の延期が決まりました。まだ、いわゆる「三連休の緩み」の前で、これから感染症がどのように推移していくのかなかなか予測できない段階での判断でしたが、4月に入って全国の状況は急速に悪化、青森県美も4月11日から休館、そして16日には全国に緊急事態宣言が発出されることとなり、結果的にこの早期の決断は正しかったように思います。
とりあえず5月21日から美術館は再開館していますが、もともと超過密展示で、なおかつ読む資料が多い富野展は、もしそのまま展覧会を開催していたとしても入場制限をはじめ、十全な鑑賞機会の提供にはほど遠い様々な制約を来館者へ要請することになったでしょう。自由に動き回ることのできる空間、そして作品とじっくり向き合える落ち着いた環境は展覧会には必要不可欠ですから、担当学芸員としても「延期」を選択してよかったとつくづく。むしろ、展覧会を練り込む期間が与えられたのだとポジティブに捉え、時間不足であきらめた、さらにいくつかのプランも実現を目指して準備していきたいと思ってます(同時開催のコレクション展を富野展に連動させたいなあ、と。余談ですが、安彦良和さんは学生時代を青森で過ごしたし、手塚治虫さんやトキワ荘の面々とゆかりの深かった編集者の加藤謙一さんも青森出身なんですよね。)。
新しい会期はもうすぐ発表できるはずですが(3番目の会場から最後の6番目に移動ということになりそうです)、それでもまだ今回の感染症が完全に終息しているとは考えにくい。そう、「世の中って、こちらの都合や好きで動くなんて事は一切ない」のですから。それゆえに、新しい時代に即した展示の「ニューノーマル」(僕のパソコンではまず「ν」と変換される!さすがw)についても模索したいと思っています。担当が胸の奥に秘めているキャッチフレーズは、「誰も知らないラスト・・・富野由悠季の世界完結編」。富山展と静岡展を楽しんでいただいた後にぜひ青森へ!待ち遠しくても、待ってください!なのです。
(青森県立美術館 工藤健志)

図版1〜2:幻となった青森会場の印刷物。ポスターはリバーシブル仕様になってます。共通イメージもよく見ると前会場までとはキャラが一部異なってるんですね。 オリジナルイメージの方は青森県美の展示空間(アレコホール)にスケールをあわせてロボットを配置したもの。イラストにはそれぞれパースが付いているからバランス取るのに随分と苦労したそうです(デザイナーの植松さん談)。チケットは担当の好みを反映してロボットで統一。分類は「主役機」、「ラスボス機」、「ライバル機」となっています。次に開催するときはもう少し修正加えたいなあ(植松さんに怒られる?)。
図版3:青森会場の展示プラン案。これ下書きではありません(笑)図面上で考えるのってすごく苦手なんです。いつもこの程度のプランで展示作業を行い、細かな配置はいつも現場合わせで。いつもみんなに「わからん!」と怒られますが、どうしてもできないんだから仕方ない。
図版4:これは青森会場のCMコンテ。担当した展覧会はCMもできるだけ自分で考えたいんですよね。で、今回は豪華に3本立て。1本目は富野監督の作品タイトルがずらっとスクロールしていくもの。富野監督のことを知らない人でもいずれかの作品に引っかかってくれることを期待して。2本目はいろんな作品のワンシーンが宇宙に舞うもの。もちろん『∀ガンダム』のOPへのオマージュです。そして3本目はキスシーンばかりを集めて編集したもの。『ニュー・シネマ・パラダイス』のラストシーンを意識しつつも、複雑な人間模様を描く富野作品に深い余韻を与えてくれるのは、やっぱり「キスの記憶…」なんですよね。
図版5〜7:青森オリジナル展示の一つ、青秀祐さんによる「リ・ガズィ」のダミーバルーン(特別に頭部のみをチラ見せ)。元ネタはみなさんお分かりですよね。劇中ではカットによって色や形がバラバラなのですが、本作ではデザインを忠実に再現。もちろん原寸大!さすがに全身が収まる展示室はないので今回は「胸像」となりますが、それでもモビルスーツの大きさを存分に体感していただけると思います。