富野由悠季の世界

富野由悠季の世界

週刊トミノ展

WWT019

「富野由悠季の世界」展 ご当地紹介 静岡

 トミノ展再起動の地・静岡。

 今回はそのご当地紹介ということですが、駿河湾と富士山については当欄第10回ですでに書かせていただいておりますので、今回は静岡県立美術館(とくにロダン館)について。ロダンとトミノは似ているのではないか……というお話です。

 当館の開館は1986年4月。その後、1994年3月には新館としてロダン館がオープンしています。ここではロダンの《地獄の門》を中心とする32体の彫刻を、明るい大空間を散策しながら観ることができるようになっています。当館は創立以来東西の風景画を中心とする美術館だったということもあり、肖像画や人物彫刻があまり収蔵されていませんでした。それを補完する意味で、まずロダンの彫刻が収蔵され、やがてロダン館開設に結びついています。

 近代彫刻史上におけるロダンの意義は情念にあふれた人間描写にあります。永遠に結ばれることのない悲劇的な愛(《パオロとフランチェスカ》)、死をもって町を救わねばならない立場に立たされた人間の運命への絶望と諦観(《カレーの市民》)、ひたすらに内攻していく世界一有名な沈思黙考(《考える人》)。ときに彫刻としての均整美を無視してまで敢行されるその濃密な肉体と精神の表現は直接的で強烈です……とここまで書いてきてふと思うのです。ロダンが新生面を開いた人間の情念の表現。それはまさにトミノアニメの顕著な特徴でもあるのではないか、と。

 1840年パリ生まれの彫刻家オーギュスト・ロダンと、1941年小田原生まれのアニメーション監督富野由悠季。ほぼ100年の時空を隔て、国もメディアも異なる2人の作家ですが、「人間を描く」という軸で観たとき、なにか通底するものがあるように思われてなりません。

 ちなみに、ロダンは「アッサンブラージュ」という手法を開拓した彫刻家でもあります。これは、まったく別々の自作同士をくっつけて新しい作品を作ること。それを通じてロダンはさまざまな試行錯誤を重ね、20世紀美術へのひとつの通路を開きました。別々のものを組み合わせることによって、まったく新しい形や意味を作り出すこと。これもなにか編集のマジシャンである富野監督に通ずるものがありますね。振り返れば、ロダンの畢生の大作《地獄の門》もまた、様々な彫刻作品の組み合わせ、すなわち大がかりなアッサンブラージュでした(これもロダン館で観られます)。

 くわえて、忘れてならないのはロダンの弟子であり恋人でもあった女流彫刻家カミーユ・クローデルの存在。『Zガンダム』の主人公カミーユ・ビダンの人物像の源泉となった人物であり、当館ではロダン館手前のギャラリーに彼女の作品が一点展示されています。

 「富野由悠季の世界」観覧の皆様はそのままロダン館も鑑賞いただけますので、この機会に是非、ロダンとクローデルの作品も御覧ください。そして、ロダンとトミノに通底するものを……君の目で確かめろ!
(静岡県立美術館 村上敬)